祈る。

電車の中。
蒼く遠い空を眺めて。
強く握り締めた吊り革の感触を確かめながら。
あの暑かった夏の日に。
地上に現れた業火を己は。
少しの実感も無く遠く思い浮かべ心の底を冷やして。
脳裏を過ぎる幾つかの映像や写真や言葉でしか知らない。
その火に生きながら焼かれ炙られ奪われた。
人々の姿と命と生を死を想い。
ただ祈る。
あの現実がこの先いかなる未来にも。
訪れることがないようにと。
ただひたすらに祈る。
ありえることとして受け入れてしまわないよう。
ただひたすらに。
祈り続ける。