もしかしなくても(1分割目/何)。

はっぴいばーど(1)。

今日は武道館当日だったりしますですか?
実は己、昨日今日と連休取ってたんですよねー。
や、ライヴとか 全 く 関係無く。
結局昨日、急にお仕事入って連休吹っ飛んだんですが。
だからってーんぢゃないですが。
こっそり、小話を投下(何々)。


今更ながらの季節ネタと。
今回はなんと画像付き(えー)。
つか。
自分の身近なモノ、ネタに流用するの。
そろそろおやめになったら?>己(えーえー)。


つーことで、2.5次元なお二人のお話です。
タイトルは、「― Your teardrops. ―」。
今回もちょっとだけ長めなのでなんと4分割(えーえーえー)。
しかも相変らず色気も何も御座いません上に。
ななさんがちょっとキャラ違うんぢゃないかとkげふがふっ。
後、割と超グダグダっぽいです。
でもって、UPしてからも結構書き直ししていたrがふごふっ。
ええと。
そりでもよろしければ、続きから、どぞどぞ(平伏)。












もしかしたら逢えないかもと思っていたから。
どうしようかな、と迷いながらでも、用意はしていた。
逢えない時間が計算出来なかったから手作りとはいかなくて。
出来るだけ賞味期限の長いものを選んで。
だから、もしも、逢えたら良いなあって。
そんな気持ちで、電話をしてみた。
ただ、それだけのつもりだった。








― Your teardrops. ―









仕事中とか忙しい時は留守番電話になっている筈だから、あまり期待しないでコール音に耳を傾ける。やっぱり無理かな、と思った頃に、ぷつっと留守録とは違う切替音がして思わず息を飲む。こんなことくらいで電話してきてーとかって、怒られちゃうかな、なんて少しだけ身構える。
けれども、繋がった筈の電話の受話器は無音のまま。


「……もしもし? ゆかりさん……?」


何となく不安になって先に声を掛ける。アドレス帳、彼女の名の前後に並んでいる人たちの名前を思い浮かべた時、ちょっとくぐもったような声が遠くから聞こえてほっとする。良かった、間違えてはいなかったみたい。
だけど。


「ゆかりさん……?」


何だか様子がおかしい。


「聞こえてます……?」


何となくどきりとしながら呼び掛ける。うん、とかうー、とかに濁点を付けたような声だけが届いて、胸が更に震える。


「もしかして、具合、悪いんですか?」


体調を心配するようなことを口にすると、彼女はちょっと嫌そうに反応することが多い。自己管理には結構厳しい人だから、若輩者から口煩いこと言われるのは好きじゃないんだろう。そんなこと百も承知だけれども、気になるときは仕方が無い。だから思い切って訊ねてみたのだけれども、いつもの不機嫌そうな言葉すら返ってこない。


「ゆ、ゆかりさんっ?」
『……大丈夫』


焦って上げた声にゆるゆると、でも全然大丈夫そうじゃない声がやっと返ってくる。


「だっ、大丈夫には聞こえませんよっ! どうしたんですか?!」
『声……』
「はいっ?!」
『おっきい。響く』
「ご……っ!」


電話の向こうのしかめっ面が見えた気がして、慌てて自分の口を塞ぐ。


「……めんなさい」
『あのね、たいしたことないから。ちょっと居眠りしてただけだから』


けほん、って咳を払った後、気怠げな小さな声で彼女は続ける。


『で、引き続き眠いんだけど、奈々ちゃんはゆかりになにかご用なのかな?』
「あー……ええと、あの……」


拒絶の気配を孕んだ、不機嫌で、でも何処か不安げな、声。
もしかしたらそれは、勝手な思い込みかもしれない、けどでも。


「今から行ってもいいですか?」


何かに突き動かされ思いつくよりも先に言葉になる。途端に向こうがしんとなる。戸惑いながら躊躇う彼女が見えた気がして、勢い込んで続ける。


「あの、渡したいものがあるんです、けど。出来れば今日中に。お渡ししたら直ぐに帰りますから」
『んー……今日じゃないと駄目? ゆかり、明日局行くから、待ち合わせとか』
「駄目です」


予想通りの返答の語尾に被せるように、言い募る。
こういうの、嫌がられるかもって思う。でも、胸の動悸がどうしても治まらない。


「今日じゃないと、駄目なんです。お願いします」


どきどき言ってる胸に押されるように畳み掛ける。少しの沈黙の後、受話器の向こうで彼女が諦めたみたいな溜息を吐くのが、聞こえた。




スタジオを出てタクシーを捕まえる。電車で行ったって構わない時間だったけれども、気持ちが急くのと途中で買い物がしたかったのとを優先する。
彼女の住まいの近くにあるスーパーの前で降ろしてもらって、必要そうなものを買い込んでいく。お薬なんかは切らしたりはしなさそうだったから、ちょっとだけ考えてのど飴とか消化に良さそうな食べ物とか水分補給になりそうなものとか、そういうのを中心に。
元々の荷物に買い物が加わって完全に両手が塞がったけれども、全然重いなんて感じない。逸る気持ちに無理にでも全力疾走したくなるのを抑えながら、彼女の住まいに向う。
なのに、ドアの前まで辿り着いた途端、心が竦み上がる。
知り合ってからだけなら随分と長い。けれども仲良くさせて貰う様になってからはまだほんの数年しか経っていない。逢えば親しげにしてくれる、けれども、こんな風にプライベートに踏み込むような真似が許されるには多分、まだ程遠い。
そんな自分の立場を思うと、急激にこめかみ辺りから血が逆流するような、酷い感覚に襲われる。
扉を開いた途端、そこに佇む彼女が「何しに来たの」って本気で不機嫌そうに言い放つ……そんな光景が鮮明に目に浮ぶ。
今度こそ、本当に、嫌われるかもしれない。
今更だったけど、そんな予感に身動き一つ取れなくなる。
独り暮らしも長いだろうし。子どもじゃないんだし。本当に辛かったらマネージャーさんなり親しい友だちなりを普通に頼るだろうし。
こんな風に押し掛けたりしたら本当に、邪魔にしかならないんじゃないのかな。
躊躇いながらインターフォンに伸ばした手が、寸前で動けなくなる。
けどでも。
それでも。
一瞬だけ、強く目を瞑る。
うん。
もしも本気で迷惑がられたら、渡すもの渡して直ぐに、帰ろう。
元々、そのつもりだったし。
責めたり嫌がったり遠ざけたり出来るくらい元気でいてくれたら、むしろ安心出来るじゃない。
そう。
自分がどう思わてれるとか、どう思われるとかは関係ない。
彼女だから、彼女が心配だから、今、ここにいる。
それだけのこと。


「しっかりしろ、私」


小声で呟いて、インターフォンのボタンに指を乗せた瞬間。
ドアが、不意に、開く。


「あ、あれ?」
「……変な人が居る……」


薄く開いたドアの向こう、酷く仏頂面の彼女が薄目を開くようにして、こちらを睨んでいた。