今回もやはりこの方の視点。

徒然っと書き書きしていた。
フェイトさん視点の小話があったのですが。
どうにもこうにも上手く進まないので視点チェンジ。
そしたら取敢えずエンドマークは付いた模様(何)。
お仕事前の慌しい時間に書き終えたので(えー)。
ちょっとあちこち綻びがありそうですが。
チェックその他は帰ってから、って事で(えーえー)。


あ、例に拠って。
原作(StS)本編インスパイア的アレです(アレて)。
なのはさんとフェイトさん、同居開始初日夜。
つーても、色気も何も無いので期待しないで下さいマジで(平伏)。


てーことで、続きに格納。


タイトル、どうしやう……(其処?!)。


ええと、「ここから、始まる。」で良いでせうかね、タイトル。
何処かで見た気がしますですがええ己的本サイトのマリmげふがふっ。
ちょっと違うから、ええかなあとか。
スンマセン、某Mさん(其処?!その2)。












― ここから、始まる。 ―





機動六課活動開始初日。
早々の訓練も一通り終了、隊員寮に戻り部屋のシャワーで一汗流してパジャマに着替え、ソファに寛ぎながらさて、とウィンドウを起動する。
明日以降、第一段階終了までの教導メニューをざっとチェックし、今日のデータと照らし合わせて細かく修正。思った以上に向上心と伸びしろのある新人4人たち、その一人ひとりの顔を思い浮かべながら、少し迷う。でもそれは、とても楽しい迷い。


「大切に、育てたいな」


ねえ、レイジング・ハート? そう胸元のパートナーに語るとも無く語りかけると、彼女は赤く明滅した。任務をこなしながらも、一年という時間を約束された戦技教導。自分自身のキャリアの中でも初めての経験。わくわくしながら教導メニューに手を入れ終え、ちょうど一息ついた所で部屋のドアの向こうに気配を感じた。今日から同居が決まった彼女が帰ってきたのだろう。


「あ、お帰りなさい、フェイトちゃん」


ドアが開いて姿を見せたと同時に、声を掛ける。
二人して今日初めて袖を通した新しい制服姿のフェイトちゃんは、私に気付いた途端、ちょっと戸惑ったように目を見開いて足を止めた。


「……どうしたの?」


お疲れなのかな、笑いながらウィンドウを閉じて立ち上がる。立ち止まったままの彼女の目は、私よりも少し高い所にあって、ほんの少し上目遣いに見上げると。


「た、ただいま」


当惑の色はそのままに小さく返事が返ってきた。


「うん、お帰り。遅かったね、会議、長引いちゃった?」
「あ、ううん、そうでも無かったよ。ただ、顔を出さないといけないところが多くて」
「ああ、そっか。大変だったね」


私には勤まらないなあ、なんて呟いて笑いかける。
フェイトちゃんは機動六課の法務および捜査担当者として、本局での会議に部隊長であるはやてちゃんと出席していたから、部隊長挨拶の時以降、六課では姿を見かけなかった。お互いの担当部署を思えばこれからも多分、同じ部隊といえども日中は顔を合わせる機会はそうはないだろう。私たちを同室にしてくれたはやてちゃんの心遣いがいっそう有難いな、と思う。


「じゃ、早く着替えて寛いでよ。あ、そうそう、この部屋のシャワールーム、結構広くて使い心地良いんだよ」


言いながら見上げたフェイトちゃんは、まだ少しぼんやりとしている。


「……フェイトちゃーん?」


首を傾げて名を呼べば、はっとしたように真紅の瞳を瞬かせた。


「え? あ? ごめん」
「どうしちゃったの、さっきからホントにぼんやりさんだねー」


思わず苦笑しながら、その額に掌を当ててみる。うん、大丈夫。


「熱はないね」
「無いよ、大丈夫だよ」


フェイトちゃんの頬にも苦笑が浮かび上がって、ちょっとほっとする。


「それじゃ、何でそんなにぼんやりさんなのかな。やっぱりちょっと、疲れてるんじゃない?」


笑いながら詰め寄ると、彼女は笑顔を和らげた。


「そうだね、それもあるけど……ちょっと、吃驚しちゃったっていうか」
「吃驚? どうして?」
「さあ……」


曖昧に返すフェイトちゃんは既にいつものフェイトちゃんで、あれー?と何だか納得がいかない気分で私は眉を寄せた。


「フェイトちゃん、それって答えになってないよ?」
「ごめんごめん」


むう、と詰め寄ると、フェイトちゃんは笑顔のまま小さく肩をすくめる。綺麗に澄んだ真紅の瞳が考え深い色を湛えている。そこに、辛さとか切なさとかが滲んでいないことに、私は少しだけ安心していた。
フェイトちゃんは、優しくて、思慮深くて、強い。でも、優しいから、人に対する思いやりが深いから、その分自分の中に沢山のものを抱え込んで独りで耐えようとしてしまうことが多い。確かにそれは彼女の強さでもあるのだけれども、いつも近くに居られる訳じゃなかった私には、いつも心配で、もどかしいことで。
でも、今のフェイトちゃんは、辛かったり苦しかったりでぼんやりしてしまった訳じゃなさそうで、それが分かってほっとする。


「……あのね」


私が色々と考えてしまっていた事に気づいたのか、フェイトちゃんは少し申し訳無さそうな顔になって続けた。


「何て言えば良いのかな……物凄く、普通だったから」
「普通? 何が?」
「なのはが言ってくれた、『お帰りなさい』が」


そう呟いた彼女の声は真剣そのもので、私は一瞬、訳が分からなくなってしまう。


「……ええと。挨拶は、礼儀の基本、だよね?」
「うん、まあ、そういう意味での普通じゃなくて……」


言って、はにかむように目を逸らしたフェイトちゃんの横顔に、あ、とようやく思い至る。
中学校を卒業すると同時に海鳴の街を離れ、時空管理局員としての勤務を本格的に始めてから4年と少し。訓練校やアースラでの研修期間を除けば、武装隊入りした私と、次元航行艦船に乗船勤務してあちらこちらの次元世界を行き来する執務官への道を歩き始めた彼女とが、日常時間を共に過ごす事なんて殆ど無いに等しくなっていた。休日を合わせて二人で、或いは、はやてちゃんたちも誘って、海鳴に里帰りしたりお互いの住まいを行き来したりする機会すら、年に数回あれば良い方。それがここ数年の二人の「普通」。
勿論、一緒に居られなくても、いつもいつも逢うことは出来なくても、私たちがお互いを大切に思う気持ちには何の変わりはないのだけれども。
さっき、考えたばかりだったのにな、と今度は私が苦笑する番だった。
同じ部隊に居ても、そうそう顔を合わせたり同じ任務に着くことはない、けれど、今日からは同じ部屋で暮らせる、それが有難くて、嬉しいって。
でも、そんな事を口にするのは何だか恥ずかしいから。


「フェイトちゃーん、私がお帰りって言うたびに吃驚してたらこの先一年、もたないよー?」


冗談めかして言いながらその肩に抱きついて、照れ臭さに高潮し始めた顔をその視線から隠した。


「……うん、そうだね」


フェイトちゃんも、笑いながら、抱き締め返してくれる。


「ただいま、なのは。この先一年、よろしく」


そういって、静かに微笑んだ彼女の顔こそ、とても「普通」に穏かで、ほんの少し、悔しいような気持ちになった。




今日一日のお互いの出来事を話しながら、ステップフロアへと二人して上がるとそこには、大人が三人くらい楽に休めそうな大きなベッドがあって、その枕元には壁一面を覆うようなサイズのコルクボード。懐かしい写真が既に何枚も貼り付けられているけれどもそれは、私たちの仕業ではなかった。多分、この部屋を用意してくれたはやてちゃんとリインの心づくし、なのだろう。
とはいえ、小学生の頃、海鳴の幼馴染たちと撮ったものから、管理局入りした時の記念写真、広報部から取材を受けた時のポートレート、ハラオウン家の家族旅行のスナップ、後の機動六課メンバーたちと初顔合わせした時の記録映像から写しだしたものと思しきもの等など、良くもこんなものまでと懐かしくなったり気恥ずかしくなるものから、ごく最近のものまで、ボード一杯に散りばめられていては、とてもじゃないけれどもまともに視線を向けられない。さっさとベッドに腰掛け背中を向けたら、フェイトちゃんも同じ気持ちなのか、そちらの方は見ないふりで、そそくさと上着を脱いで傍のハンガーに掛けようとしているところだった。


「ところで教導官どの、新人たちの手ごたえは?」
「うん、みんな元気で良い感じ」


今日一日の教導を思い出しただけでも、ちょっと顔が綻ぶのが自分でも分かる。私たちとはやてちゃんとで色々考えて探し当てた、4人の新人たち。その内の二人はレアスキル所持者というだけなく、フェイトちゃんの被保護者でもあって、そういう意味でもちょっと楽しみにしていたし、残る二人は能力も資質も本当にバランスの良く取れたベストコンビ。4人が4人ともそれぞれがそれぞれの目的を持って遠く高い場所を目指そうとしていることも分かっているから。


「立派に育っていってくれると、いいんだけど」


保護者的立場にもあるフェイトちゃんの言葉は、ほんの少し心配性な響きを帯びていたけれども、私は強く頷いた。


「育てるよ」


振り返った彼女の眼差しを真っ直ぐに見上げて、笑いかける。


「あの子たちがちゃんと、自分の道を戦っていけるように、ね」
「……うん、そうだね」


ほんの少しの間を開けて、フェイトちゃんも頷き返してくれた。


「さて、と。明日からはいよいよ24時間勤務体制、早朝訓練から教導メニュー開始。私はもう休むけど、フェイトちゃんは?」
「せっかくだから、はやて自慢の大浴場使ってこようかな。あ、部屋の電気は消してくれてても大丈夫だから」
「うん。……でもフェイトちゃん、独りで平気?」


ほんのちょっとだけ悪戯な気分で尋ねてみたら、一瞬きょとん、とした後、フェイトちゃんは少しふくれて見せた。


「もう。髪はひとりでもちゃんと洗えるから。っていうか、なのは、いつまでその話するの」
「にゃははは。だってフェイトちゃん、今でも目、開けられないままなんだもん」
「開けられないだけだよ? ちゃんと洗えるよ?」
「はいはい」


困ったらいつでも呼んでね、なんて言ってみせたら彼女は返事も振り返りもしないでさっさとフロアを降りていった。その背中を見送っていて、ふと、胸を過ぎった暖かい想いに突き動かされて。


「――フェイトちゃん?」


そっと小さな声で呼び掛けると、ちゃんと気付いてくれた彼女が振り返る。淡い間接照明に浮かび上がった、それは、とても当たり前で、同時にとても懐かしい大切な姿だった。


「お休みなさーい」


微笑んで小さく手を振る。


「ほら、戻ってきたら私、もう寝ちゃってるかもしれないから」
「そっか、そうだね」


フェイトちゃんも微笑みながら、手を振り返してくれる。


「お休みなさい、なのは。また明日」
「うん、また明日」


長い金の髪を背中で揺らしながら部屋を出て行くのを見送ってから、私は、そのままベッドに倒れこむように横になる。ゆったりと上下するスプリングの波に身を任せてそっと目を閉じる。


この場所が、今日から私の、私たちの、帰る場所。
多分それは、今までと同じ、仮初めのもので。
でも、それでも。
帰る場所があって、同じ場所に帰ってくる大切な人が居て。
受け止めて、受け止められて。
守って、守られて。


この場所が生まれた理由の源には。
悲しい現実や痛みや辛さ、苦しみも確かにあるけれど。
でも、だからこそ。


――守るよ、どんなことがあっても。


この場所を、大切な人たちを。
これまでと同じように、それ以上に。


――そして、育てるよ。


自分がかつて、そうして導かれたように。


強く閉じた瞼の裏に、広がるのは何処までも蒼い空。
その空をゆく、幾つもの軌跡を思い描く。


どんな時も、どんな瞬間も。
必ず、笑顔で迎えてみせる。
一つひとつクリアして、そのたびに伸びてゆく道の上で。
暖かな、優しい笑顔を交わし合う、その為に。
何度も、何度でも。


そんな毎日が、今、始まろうとしている。




― 了 ―








だからほら。
己に色気とかエrい展開とかを。
求めてはいけませんって(あくまで其処?!)。