明日香の地酒。

純米万葉しろきたちばな。以前、明日香散策に行った折、偶々通り掛りに立ち寄った、小さな酒蔵、脇本酒造さんで買い求めたお酒です。「右近橘」の蔵元さん、と申せば、お好きな方はご存知かもしれませぬね。歴史散歩の徒然に、道端に佇む手書きの素朴な看板にふらふらと引き寄せられて参りましたらば、昔懐かしい構えのお店があって、足を踏み入れると左手には利き酒コーナーが。ブザーを押してしばし待つ内に、白髪のおばあさんがいらっさいました。先代さんのご夫人だそうで、お薦めの地酒を振舞って下さりつつ、戦中戦後の厳しい時期を乗り越えて美味しいお酒造りを続けてきた先代さんたちの思い出話を語って下さいました。湧き水や地下水では無く、飛鳥川の源流を仕込み水にしていると言ふお話の時などは、ご家族で撮り溜めたスナップ写真なども見せて下さったり……。楽しかったあの日を思い出しつつ、良く冷やしてそのまま一杯、氷を満たしたグラスに注いで更に一杯。額に滲んで流れ落ちる汗すら、不快とは思えない。寧ろこうして胸を満たして汗を浮かす熱を、懐かしく楽しみつつ。良いお酒です。あの日の出逢いと思い出に、心から、感謝。そして、乾杯。