つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)

随分と前に購入して、今日までぐずぐずと読み終えるのを先延ばしにしてしまってました。この作者さまの作品をちゃんと読んだのは実はこの本が始めてだったり。中学生や高校生が主人公の、ライトノベルではない、どちらかと言ふと児童書やヤング・アダルトと呼ばれるジャンルの書籍はもしかしたら苦手なのかもしれない己、この本も、裏表紙の粗筋を読んだだけだったら間違いなく買ったりしなかったと思われ。でも、ぱらりと開いて数頁読んだ次の瞬間にレジに持っていってました(笑)。適度に簡潔で適度に乾いた、でも、斜に構えた所のない文章と言葉遣いと登場人物たちへの眼差しに心を惹かれたのかも知れないです。でもって、先延ばしにしていたラストシーンへのくだりを本日あろうことか出勤前昼食を摂りに入ったミスドのカウンタ席で読んでしまい…久し振りに人前で涙滲ませてしまいましたよ…嗚呼、煙草吸ってて良かった…(ヲイ)。己の心の中にもささやかながら「とうといもの」が存在していて、だからこそ、こうして何とか撚れながらもがきながらのた打ち回りながら生きていられるのです。その想いをこうして鮮やかに描いてくれたこの作品には、ちょっと感謝にも似た感動を覚えましたです。