怖くて恐ろしくて綺麗で。

うっかり電車を乗り過ごしました……(何)。

秘密 3―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)

秘密 3―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)

清水玲子先生の作品の中では己は、もしかしたらこりが一番好きかもです。実は代表作と名高い『月の子』も『輝夜姫』も中途半端に雑誌でしか追っ掛けられなくて未だに全編読んだ事ない己は、長編連載ものが実は苦手で、この方の作品だとエレナ&ジャックシリーズの『竜の眠る星』が限界だったのですが、こりは何処までも何処まで追い掛けられそうです……つーか、要は連作だったら長くなっても平気っつーだけぢゃないのかと小一時間(マテ)。そりは兎も角、死者の脳が生前見ていた世界を再生、その画像と音声を手掛かりに犯罪捜査に挑む科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」が舞台のこのシリーズも早三巻目……つーか、巻を追うごとに描かれる犯罪世界が容赦無くなるっつーかエグくなるっつーか(汗)。実はこの手の猟奇的犯罪を描く映像作品が苦手な己、映画とかアニメとかだったら絶対手を出せなかったなあと。「MRIスキャナー」が初めて登場した第一作目に当たる短編を雑誌史上で読んだ時は、その映画的な物語世界とキレの言い台詞・展開、躍動的でかつ美しい画面構成に、こりを実写化出来ないものかなあ……ハリウッド辺りが映画化権、取りに来てもおかしくないよなあ、などと友人と語り合ったものですが、舞台が「第九」に移った辺りで、己、その夢を捨てました(何)。つーか、無理、絶対無理。実写でもアニメでもない、勿論、清水先生以外の漫画家さんの手に為るものでも己は多分、駄目だと思いました。この、恐ろしくも美しいグロテスクな世界を、その境界線の上を毅然と歩く牧警視正を、他の誰が描き、生かせると言ふのか。己にはちーっとも思い浮かびません。人の醜さ愚かしさ怖さをこれでもかと見せ付けながら、その愛しさ美しさ悲しさをも描き出し、言葉も浮ばない程の独特の読後感を残す……「泣ける」なんて簡単な一言では表しやうもない、これは紛れもない感動。複雑で、やりきれない、けれども決してどす黒くはない、何処か透明な哀しみと余韻を常に残す、もの凄い作品だと改めて感じましたです。でもって、青木さんが良いんですよねえ……牧さんの危うさを物凄く真っ当な場所から見守り受け止めている彼の存在が、この作品の要の一つなのだと改めて。同時収録の怪談めいた番外短編での二人も、素敵でしたです。や、別に腐な視点抜きにしても!(其処?!)巻末のエッセイ漫画「現実の秘密」も興味深い内容で。ともあれ、最後まで読み終えるまで、帰りの電車を降るの忘れて終着駅一つ前まで乗り過ごしてしまうくらい(汗笑)夢中になってしまった一冊でしたです。