分かって貰いたい。
信じたい、といふ気持ちと。
分かって貰えない。
信じられない、といふ怖れの真ん中に立ち竦む状態。


自分自身の中で抱え切れなくて。
吐き出す先も叫び出す場所も見つからなくて。
どうしやうもない心。
そんな、自分でも背負いきれない重荷をでも。
誰かに無条件に預けて早く楽になりたいとまで望む。
我が侭で贅沢な心。


伸ばされる手はあっても。
望む形で差し伸べられたものでなければ。
振り払うしかない苦しさ。


そうやって。
周りを試しながら。
自身を試しながら。
それでも日常は穏やかに。
忙しなさに取り紛れて静かに。
自分だけを取り残して流れ過ぎて行くから。


だから、自分は、結局。
何処にも辿り着けない人間なのだと。
諦め蹲るしかないと思い詰めすらするのだけれども。


そんな自分を。
あるがままに、ただ、じっと。
見つめている眼差しに気付く時があって。
それは、優しさや悲しさや怒りや軽蔑のやうな。
どんな色をも纏わない眼差しで。
ただ其処にある自分の心を。
あるがままに、ただ、じっと。
揺るがず見据える眼差しで。
その向こうにある心がどんなものであれ。
とても確かな形を持ったものだといふ事に気付く時。
突然に。
真っ平らな地面だとか。
鏡のやうな水面だとかに据え置かれ。
放り出された心地になって。


それは、決して。
自身があてどなく求めていた何かではなく。
望む形でもたらされた優しさや憐憫でもないのだけれども。
気付いた瞬間。
少なくともこの両の足が踏みしめている場所を知り。
澱む闇の底にありながら、でも確かに。
自らを激しく揺さぶる嵐からは、解放される。


それを救いとは呼べないかもしれないけれども。
ただ一人では立ち行かないこの弱い心を。
自ら投げ出さずに生きるしかない自分にとっては。
多分、最も、近いもの。